昭和49年10月4日付 

おへそが笑う!!

写真雑誌の口絵を批評するように頼まれて色々と見ていった。口絵にあるヌード写真を見ていて、すぐ「おへそ」が気になって、またしても目がそこへゆく。見れば見るほどおもしろいのがあるのでちょっとご披露する。

乳首二つとおへそだけがある口絵には参った。そのおへそだけ写真にしてここにご覧に入れる。(文字だけではウマイことかけないのである)こんなに変わったものは見たことがない。

それでは一体どれだけ「おへそ」を見たのかと考えると、ハッキリ言えない。あんまりえらそうには言えない、見たとは言えぬ位なにもおぼえていない(見ないものをおぼえているわけはない!!テナことになりそうで、はなはだたよりないことになった)

次にご想像願う写真は「とりすました美人が黒の衣装をきて荘重にポーズをしている、衣の間から乳一つとおなか少しが見えていて、胸にかけた鎖が長くたれ下がってその先の十字架がおへそのすぐ上にある。爪を赤く塗った手がおへその横をおさえている」おへそは丸型で縦にS字状の線が入っている、ユーモアがあってかわいらしいとでも言うことにしよう。

今一つ、これはゴボッと中が奥にへっこんで何も見えない、タテに長い卵形の穴があり、その中は黒々としているだけで、外から見るとこれはマコトに幽玄でもあるが、もの悲しいおへそでもある。(ちょっと試みに指を入れたくもなるが気味が悪いのでやめにする)

自分のへそは上から見えても前からは見えない。自分のものはたなあげにして、人さまのへそをあげつらう(トヤカク批評する)ことになるが、こればかりはお互い様でナンボへそをくさしてもエヘラエヘラと笑い出すだけであろう。

それに、くさしている相手が自分のものをたなあげして、良い気になっていることに気がつくと、こっちも笑いが二重に倍になって、おへそがよけいに笑いだすことになろう。

逆に「アンサン結構なおへそでござりますナァ」ナンテやられたら「イヤー・・・それほどでもござりません」とすましておられるかどうか?

やはり、おへそは別格、心のふるさとのあるところ。雷さまにとられないように大切にしたいものである。

これを機会に、せいぜいおへそを見直すことにした。さし当たって踊り子の生きの良いのを研究することになろう。まず十倍の双眼鏡を持ちだすこと・・・。

ちょっとお耳を拝借、どうやらそこまで行かないでも、すみそうですよ。上着が短くなっておへそが見える服装が流行しかけているようで、たのしみなことです。裾(すそ)まで長いのがウロウロしてもらう方がまことにありがたい幸せです。

せいぜい長生きをしなければアキマヘン!!

(写真家・ハナヤ勘兵衛)